トレーニング・回復
応急処置
応急処置は、外傷によって起きる炎症を必要最小限に抑え、早期回復には必要不可欠なことです。
この応急処置をできるだけ早く、かつ的確に行うか否かで傷害の重症度を左右することもあります。
そこで下記では、外傷の応急処置の基本であるRICE処置を中心に説明をしていきます!
炎症とは
炎症とは、損傷を受けた自己組織を修復する一連の生体防御反応のことを言います。組織の損傷が起きるとその反応として炎症が起きますが、応急処置では、この炎症とどのように付き合うかが重要となります。また炎症には
- 発赤
- 熱感
- 腫脹
- 疼痛
- 機能障害
の5つの徴候があります。しかしこれらは組織の修復にとって不可欠な反応であるため、炎症をさせないのではなく、応急処置により組織の損傷が拡大しないように防ぐこと、また炎症を最小限に抑えることを応急処置の目的としています。
RICE処置とは
RICEはそれぞれ、Rest(安静)、Ice(冷却)、Compression(圧迫)、Elevation(挙上)を意味し、4つの手技の頭文字を用いた外傷の代表的な応急処置のことを言います。
RICE処置の目的は大きく3つです。
- 腫れ、炎症症状を最小限に抑える!
- 症状の慢性化、長期化を防ぐ!
- 早期のスポーツ復帰を目指す!
また近年では、“P:Protect(保護)”と“S:Stabilization/Support(安定・固定)”が追加され、PRICES処置とも言います。
Rest(安静)
運動の中止をすることで、全身の血液循環を抑えて患部への血流量を減らす。
患部の固定により、損傷部位の動揺を防ぎ局所的な安静をはかる。
体内の循環が活発にならないよう全身的な安静も必要なため、座るなどして動かないようにする。
Ice(冷却)
患部の冷却により疼痛を緩和させる。
炎症によって過剰に高まった局所の熱感を下げる。
血管を収縮させ患部の血流を減少し、内出血を抑える。
患部周辺の組織の代謝を低下させ、炎症を抑える。
Compression(圧迫)
損傷した細胞や毛細血管から、細胞液や血液が漏出する現象(内出血)を防ぐ。
大量に血液が流れ込むのを抑制するとともに、血液が残存する(血腫の形成)のを防ぐ。
弾性包帯やバンテージを用いて適度な圧迫が加わるように巻く。
Elevation(挙上)
重力などの影響で内出血が進むのを防ぐために、患部を心臓よりも高い位置にする。
例えば下肢の場合は横になり、イスやクッション、座布団などで足を高く持ち上げる。
これら4つの手技を行うことがRICE処置とされますが、すべての手技が行えない場合には、その場の条件に合わせ1つでも多くの手技を施すことが大切となります。
※皮膚などに傷のあるケガの場合
創(傷口)の感染を防止するために、まず創を流水で洗い流します。また出血を伴う場合も止血を先に行います。清潔なガーゼや絆創膏で創を覆ってからRICE処置を行いましょう。
アイシングの方法
氷嚢・アイスパック
氷嚢やビニール袋に適量の氷を入れ、中の空気を吸い取り真空状態にする。板状になるように平らにし、皮膚との接触面積を大きくする。
弾性包帯やバンテージ、ラップ、タオルで圧迫をかけ固定する。氷嚢は氷を入れるだけなので手軽にアイシングが行え、またケアの習慣化のためにも1つ持って おくと便利。
コールドパック・ケミカルパック
ケミカルパックは振ったり叩いたりして化学反応で低温を作り出すもので、薬局で簡単に手に入る。どちらも非常に温度が低く凍傷の危険が高いので、タオルや手ぬぐいを巻いて使用する。
アイスバス
バケツやマグカップなどの容器に水を張り、氷を入れて患部を中に浸す。
足先や指先など末端の冷却過剰には注意。
クーリングダウンとしての全身冷却や交代浴にも効果的。
RICE処置の留意点
冷却時間
時間は1回につき15~30分を目安に行う。
1~2時間程度インターバルを置いて再度アイシングを行う。(アイシングをしていない間も安静・圧迫・挙上は継続)
急性期である受傷後24~72時間の間はこのアイシングを繰り返し行う。
凍傷に注意
家庭用の冷蔵庫から取り出したばかりの氷やカチカチに固まったアイスパックは、温度が低すぎるため、水に溶かしたり氷水にしてから使うなどの工夫が必要。
あまりにも冷える場合はタオルや手ぬぐいを置き、その上からアイシングを当てる。
湿布薬とコールドスプレーの使用について
湿布薬:
温湿布は血行を促進し代謝を高める効果があるので、応急処置として用いると症状を悪化させてしまう。
冷湿布は貼った初期の冷却感のみであり、冷却効果としてはアイシングと比較するとかなり劣る。
受傷直後はアイシングを行い、アイシングのできない就寝時や移動時になどに冷湿布を用いると良い。
コールドスプレー:
一時的な冷却感と痛覚麻痺の効果があるが、アイシングの効果はほとんど見込めない。
外傷の急性期には組織の損傷や炎症の増大を誘発させないために、運動を中止し安静にすることはもちろんですが、そのほか入浴や飲酒、就寝時など日常生活においても十分に配慮をする必要があります。
入浴についてはシャワーですませたり、お酒の席があったとしてもノンアルコールですませたり、就寝時も圧迫を継続して患部を高く上げるなど、症状の悪化を防ぐよう努めなければなりません。
スポーツ現場で用意しておくと良いもの
氷やケミカルパック、タオルやバンテージがあれば受傷後すぐにRICE処置が行えます。
しかしスポーツ現場では氷が確保できない状況もあるでしょう。
その場合は流水でも良いので患部を冷却したり、水に濡らしたタオルを巻いたり、圧迫や挙上だけでも行ったりとRICE処置を素早く的確に行うことで、炎症を必要最小限に抑えられるようにしましょう!
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