アスリート鍼灸整骨院 アスリートトレーニングセンター

アキレス腱の傷害

アキレス腱の傷害について

アキレス腱は、ふくらはぎの筋肉とかかとをつなぐ太くて強い腱で、足首の後ろ側にあります。歩く・走る・跳ぶといった動作に大きく関わるため、スポーツをされている方には非常に重要な組織です。

しかし、このアキレス腱には**使いすぎ(オーバーユース)**によって痛みが生じやすく、子どもから大人まで幅広い年齢層にみられる傷害でもあります。

アキレス腱の痛みには、大きく分けて2つの代表的な障害があります。


① アキレス腱周囲炎(しゅういえん)

アキレス腱を包む組織(パラテノン)に炎症が生じた状態で、比較的急性に発症することが多いのが特徴です。

  • 起床時や運動開始時に強い痛みが出やすい
  • アキレス腱を指でつまむと痛みが出る
  • 腫れや熱感を伴う場合もあり

この段階での適切な対処により、回復は比較的スムーズに進みます。


② アキレス腱炎

アキレス腱周囲炎が長期間にわたり改善しない場合、やがて腱の内部にまで炎症が波及し、「アキレス腱炎」へと進行します。

  • アキレス腱の中ほどが硬く・太く肥厚してくる
  • 慢性的な痛みや違和感が続く
  • 進行すると、部分的な断裂や完全断裂のリスクが高まる

この状態になると、回復に長い時間がかかり、完治が困難になることもあります。実際、アキレス腱の慢性炎症によって競技からの引退を余儀なくされる選手も少なくありません。

アキレス腱の傷害:原因と予防

  • アキレス腱の障害は、さまざまな要因が重なって発症します。特にスポーツ愛好家や部活動中の学生、マラソンランナーなどに多く見られる傷害です。

    ■ 原因として考えられるもの
    ふくらはぎ(下腿三頭筋)の柔軟性低下
     → 筋肉が硬くなるとアキレス腱に過剰な負担がかかります。
    足関節や足裏の構造的な問題
     → 扁平足やハイアーチ(高すぎる土踏まず)などにより、衝撃がダイレクトにアキレス腱へ伝わります。
    使いすぎ(オーバーユース)
     → 硬い地面(コンクリートなど)での長時間走行や、急なトレーニング強度の上昇はリスクを高めます。
    足に合わない靴の使用
     → サイズや形の合っていない靴、クッション性の低い靴はトラブルの原因に。

    ■ 治療とケアは「種類によって異なる」
    アキレス腱周囲炎アキレス腱炎は、見た目や症状が似ていても、治療方針やケアの方法は大きく異なります。
    **急性期(周囲炎)**はアイシングや安静が中心
    **慢性期(腱炎)**では温熱・リハビリ・筋膜リリースなどを組み合わせて対応
    自己判断でケアを続けると悪化してしまうこともあるため、状態に応じた専門的な評価と処置が大切です。

    《予防のポイント》
    ふくらはぎのストレッチとマッサージ
     → 柔軟性を高め、負担を軽減します。
    足に合った靴・インソールの使用
     → 足の形状に合ったサポートで衝撃を分散します。
    運動量は段階的にアップ
     → トレーニングの強度は週10%以内の増加を目安に。無理は禁物です。
    硬い地面での運動を避ける
     → 可能な限り、柔らかい土やフロア上でトレーニングを行いましょう。

    《慢性化する前に医療機関へ》
    アキレス腱炎が慢性化すると、腱そのものの変性や断裂のリスクが高まり、エコー検査やMRIによる精密評価が必要になることもあります。
    違和感や痛みが続く場合は、絶対に放置せず、早期に専門家にご相談ください。
    早期対応こそが、競技復帰や再発防止への一番の近道です。


    ベッカムもアキレス腱を損傷しました。

アキレス腱の断裂はこんな音が鳴ります。

アキレス腱周囲炎の治療

アキレス腱周囲炎やアキレス腱炎は、早期の対応が回復の鍵となる傷害です。症状を悪化させないためにも、以下のような治療やケアが推奨されます。


■ 1. ヒールウェッジの使用(シューズ内パッド)

まずは、アキレス腱への負担を軽減するために、トレーニングシューズのかかと部分に「ヒールウェッジ(傾斜パッド)」を挿入します。
これにより、アキレス腱が引き伸ばされる状態を緩和し、痛みの軽減に効果があります。


■ 2. 筋肉の柔軟性改善

  • ふくらはぎ(腓腹筋・ヒラメ筋)や足底筋へのストレッチ・マッサージ
  • 足首まわりのリハビリテーション

これらによって、緊張した筋肉をゆるめ、アキレス腱への過度な牽引力を減らすことが可能になります。


■ 3. アイシングと休息

炎症のある初期段階では、**アイシング(1日数回、15~20分程度)**が有効です。
また、一時的に運動を控えること(安静)も大切です。痛みがある間は、アキレス腱に負担のかかるトレーニングは避け、運動内容の見直し・調整も行いましょう。

アキレス腱炎の治療

アキレス腱の炎症が長期化すると、腱の組織そのものが弱く・脆くなり、構造的に破壊されていく可能性があります。
その結果、わずかな動作でもアキレス腱断裂につながる危険性が高まります。


■ リハビリテーションが治療の中心

慢性化したアキレス腱炎に対しては、リハビリが第一選択となるのが一般的です。
特に重要なのが以下のポイントです:

  • ふくらはぎ(下腿三頭筋)の柔軟性の回復
  • 足首や足底筋の安定性と筋力強化

■ 遠心性(エキセントリック)トレーニングの導入

慢性期のアキレス腱炎では、「遠心性収縮トレーニング(eccentric training)」という特殊な運動法が効果的とされています。
これは、筋肉が伸びながら力を発揮する動作で、腱の修復と強化を促すことが期待できます。

⚠️ このトレーニングはフォームと負荷設定が重要なため、専門のトレーナーや施術者との相談の上で実施することが推奨されます。